宮田登による『 ハレとケ 』

ハレ
はれ
日本民俗学の基礎概念として、ケ(褻、毛、気)に対比する内容を示す語である。一般にはハレとケは民俗文化を分析する用語として使われている。ケが日常的側面を説明しているのに対して、ハレは非日常的側面を説明する。ハレは晴、公の漢語に置き替えられる例が多い。晴は天候の晴天に通じ、公は公的な儀式に表現されている。したがってハレ着という場合には、普段着ではなく公的な儀式に参加する際に着用する盛装や礼装に当てはまる。人が誕生してから死に至るまでに何度もハレの儀礼に出会う。宮参り、七五三、成年式、結婚式、年祝いなど冠婚葬祭が基本にある。また1年間の行事においても、正月、盆、神祭りなどもハレの機会である。→晴装束
 ハレは衣食住に顕著に表現されており、ハレ着のほかにも、食事が普段と異なり特別の作り方をする例に示される。神祭りに使われる神饌(しんせん)や、供物を人々が食べ合う直会(なおらい)などの食事、餅(もち)や赤飯、赤い色をつけた食物をカワリモノとしてハレの食物にしている。
 ハレはケを基本にして成り立っている。ケである普段の生活、日常生活が維持できなくなると、それとは別のリズムをもった生活が必要になる。非日常的な側面が強調されるのであり、それは精神が高揚した晴れやかな気分に満ちた時間と空間をさすことになる。私的な部分よりも公的な部分が顕著なのであり、ケに対するハレが公式の儀礼に表現されてくることになる。



民俗文化の日常的な面を説明する概念として、柳田国男(やなぎたくにお)によって唱えられ、以後、日本文化の構造を解釈する際の有効な手段として人文科学の諸分野で使われるようになっている。ケは漢字の表記では、褻、毛、気の三通りがある。褻は、衣・食・住にわたる生活文化に具体的に表れており、ごく普通の日常生活を示している。毛は、植物の生育にかかわる語であり、とくに稲作の生育を支える稲魂(いなだま)の力と関連づけられている。気は、人間の生命力と関連する語である。ケは以上のような多面的な文化の総体と考えられている。そしてケの維持ができなくなると、ハレという形の儀礼が形成されることになり、ケとハレはともに民俗文化を構成する主要素と考えられている。

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